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活動の報告③(道草通信より)

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「地域のまなざしと『ひきこもり』」のテーマでお話の斎藤環さん(筑波大学教授・精神科医)の講演会に参加して
上田祐子(道草通信№97)


11月18日、「地域のまなざしと『ひきこもり』」と題する斎藤環さん(筑波大学教授・精神科医)の講演会に参加しました(主催:公益財団法人よこはまユース)。「ひきこもり」は今、事件との関連でも取り上げられることが多く、切実な思いで参加しましたが、私たちが子どもの「非行」に苦しみながらも道草の会で学び、つかんできたことをとらえ直す機会になりました。
たとえば、ひきこもっている人は「たまたま困難な状況にあるまともな人」で、異常性に注目するのは害になるだけだという視点。つい子どもの問題行動(=異常性)にとらわれてしまい、それを何とか押さえつけようとして状況が悪化していった頃を思い出しました。また、ひきこもりからの出口(=目指すところ)は就労や就学ではなく、「自分自身の状態を肯定的に受け入れられるようになること」という視点。「非行」の場合、「非行をしていていいんだよ」というわけにはいきませんが、「非行」当事者の方の体験をお聴きしてきて、様々な出会いや体験を通して自分自身を肯定的に受け入れられるようになると「非行」から抜けていくんだなあと感じてきたことにつながりました。
斎藤さんは、オープンダイアローグという「対話」の大切さを提唱されています。「議論、説得、尋問、叱咤激励は『対話』ではなく『独り言』(=一方通行)で~事態をこじらせる」「対話とは主観性の交換である。『客観性』や『正しいこと』は役に立たない」「対話は違いを理解すること。すり合わせようとしないで違いを違いとして放っておくこと。それが尊重すること」「対話の目的は『対話を続けること』。対話が続いてさえいれば何とかなる」等。
息子を追いかけまわし疲れ切って倒れこんでいた私に、横でテレビを見ていた息子の方から「この曲、いい曲でしょ」と話しかけてきて、小言ばかりでこういうフツーの会話をしてなかったとハッとした日のこと。子どもの言い分を否定せず、そのまま聴いて受けとめることが大事だと学んだこと。「一般論なんか聞きたくない! てめえはどう思ってるんだ!」と子どもにつきつけられたお母さんの話… いくつもの場面、思いが浮かんできました。
斎藤さんのお話は、家族や支援者がどう関わったら良いかの具体的な方法であると同時に、「ひきこもり」を異常とか甘えととらえる風潮への問題提起なのだと感じました。そしてそれは、少年法の改悪など、「非行」を厳罰化で何とかしようとする風潮への問題提起にもつながる。一人でも多くの人に知って欲しい視点だと思いました。



第17回かながわ「非行」「子どもの問題」を考える親たちのつどいに参加して
桃野清美(道草通信№96)


道草の会の会員である友人から誘われ、つどいに参加し始めてから今回で4回目となります。当時、東北福祉大学で犯罪心理学や児童心理学等を学んでいた私にとって、このつどいは活字では決して得られない包括的な生きた知識として学びの場となりました。
今回は令和元年9月28日(日)桜木町ぴおシティに於いて、「今どきの子どもたち」というテーマで、伊藤由紀夫氏(NPO法人非行克服支援センター理事・元家庭裁判所調査官)が講演されました。
伊藤氏は、「昭和55年、家庭裁判所に入所した当時は、校内暴力、器物破損、窃盗、集団暴走行為などの非行のピークであったが、急激に減少しグループが組めない子どもたちへと変化した。かつての子どもは遊ぶ金欲しさに恐喝をするにも、そこには交番に駆け込まないと人物を選定し、脅し盗るという行為が伴い、対人認知能力と対人交渉力を要していた。しかし、次第にそれが要らないひったくり、おやじ狩りなどに変わっていった。また、覚醒剤も昔は路地裏まで出向き売人から入手するという越境して違う世界に行かなければならなかったものが、現代では携帯電話の普及に伴いダイヤル一つで近所まで届けてくれるものとなり、自分のリアルな世界に入ってきている。昔は不良でも仲間がいたが、今は共犯事件も減り非行少年は孤独になっている。」と話されました。
また、少年犯罪の罰則化を求める声が高まる中、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げることが法制審議会で検討されていることについて、「少年による凶悪事件は増加も低年齢化もしていない。政治家が事実ではない感情論の発言をして厳罰化の討論が進められてしまったとも伺える。しかし、18歳19歳は立ち直る柔軟さを兼ね備えており、少年院と働きかけが違う刑務所では更生は望めない。」と講演されました。
少年法も刑法も目的は何でしょうか。私は社会を犯罪から守るためにあると考えます。20歳未満は未成熟であり可塑性が高いとされ、だからこそ、刑法による応報ではなく、少年法による教育指導が少年を立ち直らせ、そのことで社会を犯罪から守ろうとしているのです。
今、私たちの社会は少年法の本来の目的を見失ってしまっているのかもしれません。少年法は少年を決して保護しているわけではなく、厳しい教育を科すことで少年を更生させ、結果、未来の犯罪を防止する。そのための少年法であることを、この講演をきっかけにより多くの人に伝えていきたいとあらためて思います。



「非行」と向き合う全国ネット学習会 in 福岡に参加して
会員 Y・H(道草通信№96)


去る9月22日(日)に福岡県で開かれた全国ネット学習会に行ってきました。
第一部の講演はNPO法人TFG(田川ふれ愛塾)理事長の工藤良さんでした。
田川ふれ愛塾は、民間で初の少年専門の更生保護施設として法務大臣の許可を得ました。
 非行、遊び型の少年少女を受け入れ、学校、社会への復帰や自立を支援するなど、青少年の育成健全に向けた活動をしています。
 工藤さんは、かつて暴走族の総長で、暴走行為などで少年院に入院、22歳の時は、覚醒剤で逮捕されましたが、拘置所の中で過去を振り返り、更生を決意したそうです。そして、少年達の駆け込み寺「田川ふれ愛塾」を設立しました。現在40名を預かっているそうです。
 反社会に足を踏み入れてしまった子、心を閉ざし人との関わりを避けて心が病んでしまった子、危ない世界に進んでしまった女の子、田川ふれ愛塾には、大きく分けると3つに分かれるそうです。
 工藤さんは、女の子の立ち直りは、なかなか難しく、頭を悩ましているそうです。
過去の自分を振り返ると、電話1本で駆け付けてくれる大人がいたらいいなと、いつも思っていたそうです。
 お話しを聞いていて、懐の深いとても温かい人柄が伝わってきました。
体験発表では、福岡県糸島市の23歳の青年が話してくれました。悪い事を繰り返してきたが、SFDと出会い、更生を考えるようになったそうで
す。SFDとは福岡県ボディビル連盟加盟のアームレスリング(腕相撲)の事です。
 地元の非行少年達や、アームレスリングに興味のある子達が集まり、小野本理事長の熱い指導のもとで活動しています。
 会場で、アームレスリングを披露してくれました。ムキムキの子達の試合は真剣そのもので、とても皆、カッコ良かったです。
 また、青年は、面倒な事を引き起こす度に頭を下げる母親の姿を見て更生を考えるようになったそうです。母親思いで兄弟思いの優しい眼差しで語ってくれました。
台風に見舞われ大変でしたが、神奈川県から飛行機に乗り行ったかい
がありました。とても良かったです。


神奈川県弁護士会 司法修習生選択プログラム 今年も講師をしました!
道草の会世話人 M(道草通信№96)


神奈川県弁護士会が開催している“司法修習生向選択プログラム”の子どもの権利委員会から道草の会への依頼で、今年も10月11日に2人で参加し、親の体験報告と「何が非行に追い立て、何が立ち直る力となるか」の調査研究報告をしました。司法修習生は、弁護士や裁判官、検事など将来司法に携わる方たちです。少年事件に関心のあるみなさんに、当事者の親としての思い、渦中の時の様子や司法とのかかわりなどを聞いてもらうことで、感じるものが少しでもあれば良いなと思います。
 また、調査研究報告は、215人の親たちのアンケート結果と非行から立ち直った42人の青年の聞き取り調査の内容がとても具体的です。お伝えした思いを、これからの仕事の中で少しでも生かしていただけたらいいなと思います。



第55回神奈川夏の教育研究大会に参加して
みちくさ世話人 KT(道草通信№95)


2019年8月18日、暑い日差しが続く。校庭では生徒たちが、サッカー練習に励んでいる。「若いなあー」と思いながら、校舎に急ぐ。受付を済ませ、記念講演会場の講堂に足を運び、ほっと一息を付き待機する。この年(72歳)になると、この夏休みの学校風景に、昔の自分と今の自分を比較するもどかしさと郷愁を感じる。毎回のこのような催しに出席すると、発言するなしにかかわらず、中学から荒れ始め、高校で退学、そして非行。あれからもう何年になったのか、息子はもう何歳になったかの年齢を頭で計算している。
今日の記念講演の講師は精神科医の香山リカさん、テーマは子供に必要な学びとは精神科医からのアドバイスである。新聞や報道でお名前を拝見するが、直接お話を聞くのは初めてである。香山リカさんは、精神科医として、子ども、若者、保護者、そして社会と向き合い、心の問題をさまざま取り組んでいる。
今日のお話は、「診察室で起きていること、特に子供の問題をめぐって」というテーマで。最初に、問題として、うつ病、引きこもり、虐待など病気かそうでないのかの境があいまい、そして、一度つまずくと、あらゆる問題がドミノ倒しのように起きる。共通する背景には「傷つきやすい」という大きな問題を抱え、親に言われて傷ついた言葉に「あなたには期待してないわ」などがある。しかも、傷をずっとひきずる。「その自己肯定感の低さ」をどうするかが問われている。大学生たちからは「誰かに必要とされている、人の役に立ったと実感したい」との言葉を聞く。そう感じる根っこは「子ども時代にある」と。傷つきやすい子供たちの特徴は「生きていても意味がないという低い自己肯定感」「このままでは終われないという高い自己実現欲求をどう引き出すか」そこで、親のこころはどうなっているかをみると「親も孤立化しており、ネットにしか頼れない」現状とその他の要因として、「自我の形成が未熟なのか、スマホやネットなしでは生活できない状況」もあり、また、教員の子供のみならず保護者をも含めたケアが要求されるなどのストレスも高くなっている。香山さんから言いたいこととして、子どもには「特別な何かにならなくてはいけない、なんてことはない」、教師には「原点に戻ろう」「マイナスを回避・拒否でなくどう受け止め、対処し、乗り越えるかが大切」また、「すぐには答えの出ないどうにも対処しようのない事態に耐える能力」を養うこと、子どもにどうしても必要なものは「私を見てくれる大人」。最後に子どもにも親・教員にも言いたいこととして「結果は今すぐ出なくてもよい」「若者言葉〈シェアする〉をおとなも大切に」と締めくくられた。
その後、4つのテーマ別分科会に分かれ、休憩後、12の分科会が開催された。道草は1つの分科会を担当し、「子どもたちの荒れや生きづらさを考える」というテーマで、スクールカウンセラーの山本なを子さん」を講師に「私が出会った子供たち」の実践例を報告していただきながら意見交換を行った。



[少年法]各界の動き
上田 祐子(道草通信№94)


民法の成人年齢が18歳になったことを理由に、少年法の対象年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げるという動きが進められています。これまでも少年法は何度も改悪されてきましたが、今回の動きはとりわけ影響が大きく何としても防ぎたいと、日本弁護士連合会の呼びかけで、今年1月に初めての各界懇談会が開かれ、出席しました。
 最初に、法務省の法制審議会に参加している弁護士の方から論議の様子が報告されたのですが、何よりも驚いたのが、18歳、19歳が少年法の対象からはずれてしまう弊害が指摘されながら、「民法との整合性をはかる」という法制度上の理由だけで論議が進められているということ。その弊害を埋めるために代替の刑事的しくみを新たにつくろうとしているという、まったくナンセンスな話なのです。
 今回、弁護士会のみなさんの他にもたくさんの団体が少年法問題に取り組んで下さっていることを知り、本当に心強く励まされ、涙の出る思いでした。主婦連の方や先生、立ち直りを支援して下さっているお坊さん、児童精神の専門家であるお医者さん、被害者の方など、本当に様々な立場の方が心強い発言をして下さるのです。私も、18歳、19歳がまだまだ非行の真っただ中で、それでもその後確実に成長し、魅力的な力を持った大人になっていっていること。立ち直っていく過程には必ず「出会い」があること。少年法からはずれると、罰金で済んでしまったり、刑務所での刑罰では「出会う機会」が失われてしまうことなど、たくさんの非行少年やその親たちとつながってきた私たちの実感を、精一杯伝えました。
 その後、さらに各界懇談会を重ね、4月には国会での院内集会、6月には連名要望書の提出など積み重ねてきています。この声を世論にまで広げて何としても年齢引き下げを食い止められればと思います。
最後に、連名の団体名をご紹介します。子どもシェルター全国ネットワーク会議/主婦連合会/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/全国青少年教化協議会/全国地域婦人団体連絡協議会/全司法労働組合/全日本教職員組合/東京都地域婦人団体連盟/日本子どもソーシャルワーク協会/日本子どもを守る会/日本児童青年精神医学会/日本弁護士連合会/被害者と司法を考える会/非行克服支援センター/「非行」と向き合う親たちの会



第19回 「非行」「子どもの問題」を考える全国交流集会
????全国交流集会に参加して
会員 Y・H(道草通信№93)


3月23日~3月24日「全国交流集会」の「非行」「子どもの問題」を語る分散会に参加しました。中学3年生から非行に走り、現在22歳の息子は、今も、まだ落ち着いたとは言えず、危なっかしいです。
このところ、親である私も、疲れが出て、体調を崩しがちになり、少し鬱の兆しがありますが、こういう時こそ、外に出て、元気を出そうと、参加させていただきました。
私の参加しましたグループは、親の立場・地域のボランティアで子育てを支えてくださっている方・非行の当事者・元高校の教師・養護施設の職員・元少年院の職員・現役の通信制高校の教師・看護学校の教師の方達がいました。親の立場が12人程でとても多く、涙ながらにお話しをされる方、そのお話しに涙する方が沢山いました。
悩みを持つ親達が、ひとりで抱え込まず「語り」を通して、少しでも明日からの生きる為の活力になればと思いました。
 2日目の全体会で、最後に臨床心理士の北村篤司さんと春野すみれさんのミニトークがありました。そこで、同じような体験をしている他の参加者の体験を聞き、自分自身の体験を語っていく中で、何かが少しずつ変わっていき、新しい語りが生まれていきますとおっしゃってました。
帰り際、会場で、北村篤司さんの著「語りが生まれ、拡がるところ」を購入させていただきました。
 内容の濃いとても良い集会でした。来年もまた参加させていただきます。


第19回 「非行」「子どもの問題」を考える全国交流集会
????分科会≪最近の詐欺事件と若者≫に参加して
会員 K・T(道草通信№93)

                  
半年前ぐらい前に我が家に「市役所から高齢者の…還付金があります」という電話があり、「この電話、詐欺だろう」というとすぐ電話が切れました。1か月ほど前にテレビで詐欺事件が取り上げられ、出演者の〇〇弁護士が被害者を装い、電話応対しながら逆になぜこんなことやっているのかやり取りしていました。その時の加害者の声が若く、アルバイト感覚で話していました。不思議に思い、子どもたちに何が起きているのか、特殊詐欺がどのような仕組みなのか学びたくて参加しました。
詐欺事件は「特殊詐欺」と言われ、面識のない不特定の物に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金高への振り込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいうことも知りました。概要は
・2013年頃から、サギ事件が、窃盗・傷害事件より多くなってきた。
・特徴として未成年から20才代後半が多くなっている.
・互いに名前はわかるが、それ以上のつながりがない.
・悪いことをした気がないがやらせられたという被害者意識もある
・主犯、従犯、掛け子、受け子、出し子など分業化の仕組み。
・多数者による分業化で罪悪感意識を希薄化させている。
・詐欺できる子は対話ができる子なので、再犯しやすい子が多い。
・暴力団の資金源の一つで、未成人であっても抜け出せないようしている。
・個室で閉じ込め掛け子を抜け出させないように電話掛けさせている。
・組織としてオーナー、ボックス(電話掛ける名簿)、掛け子、運転手、受け子という流れになっている。(知っているのは名前ぐらい)
 特殊詐欺の背景には、子どもの居場所の無さ、孤立化、経済格差、インターネット依存社会など、それを利用する暴力団などさまざまな要因があることがわかりました。


第19回 「非行」「子どもの問題」を考える全国交流集会
????分科会≪不登校・いじめ・ひきこもり≫に参加して
世話人 M(道草通信№93)


 我が子は現在32歳の息子が、10代に嵐のような日々を送りました。対照的に3歳下の弟は、家にいることが多く友人との交流も少ない子でした。大学入学後アルバイトばかりしていて留年後に2年で退学しました。それから1年半ひきこもっていました。今は出かけるようになりましたが、それでもいつどうなるか不安があり、この分科会に参加しました。
まず、ゲストの樋口裕子弁護士から、いじめ、ひきこもり、不登校の定義について、説明がありました。不登校については文部科学省定義では年間30日間、断続または連続で欠席した子どもを不登校としているそうです。
 最初に人権について、「人が生まれながら持っている権利であり、安心で安全な状態」のことと言われ、常に人権を意識しているそうです。また、お話を聞いて自己肯定感をもてない子がふえていることも気になりました。
 もう一人のゲスト内田良子さんは1998年から子ども相談室「モモの部屋」を主宰されていますが、心理カウンセラーになってから今年で45年だそうです。実はもう14年ほど前に内田さんの講演を聞きに行き、帰りに電車の中で子どもの相談をした事がありました。あの頃は藁をもつかむ勢いで何でもできたな、とちょっと今思い出すと恥ずかしいです。
文科省の毎年の学校基本調査では、小中学校の生徒数は年々減少しているのに、不登校はどんどん増加しています。しかし登校拒否を生む学校教育現場の改善は見られず、短絡的に登校拒否の数減らしをしようとしているのが実態です。保護者と連携して子どもの登校支援をしようとしているが、そのことで、子どもは唯一の居場所である家庭を失ってしまう。いじめが原因で、また長い休み明けに命を絶つ子どもが多くいますが、学校を休むことができたら命を絶つことはありません。不登校は命の非常口。家庭をシェルターとして、我が子の命をまもりましょう、と話されました。学校圧力に傷つき疲れ果てている子に安心できる居場所が必要であり、休養し回復できる時間と家族の理解が必要。同じ悩みを持つ人たちの親の会の存在がとても大切であると話されました。そこで話すこと、聞く事が子ども理解につながるという話は本当にそうだなあと思いました。私も「非行」と向き合う親たちの会とつながっていなかったら、親子ともどうなっていたかわかりません。
 ひきこもりも同様に、社会復帰、労働現場へと引き出そうと対策をされていますが、若者たちが生きづらい社会のまま過酷な労働現場に引き出しても改善されないのだと思いました。



講演会に行ってきました~~「居場所をなくした子ども・若者たち 川崎事件を取材して」
上田 祐子(道草通信№92)


昨年11月28日、公益財団法人よこはまユース主催の講演会「居場所をなくした子ども・若者たち―川崎事件を取材して」に参加しました。道草の会でもつどいで取り上げた川崎での事件について、何ができるのか、もっと知りたいという思いからでした。
 講師は、ノンフィクション作家・小説家の石井光太さん。20歳代から海外を放浪し、極貧のスラムに生きるストリートチルドレンを描いたり、東日本大震災では遺体安置場を取材しての本、そして川崎事件では「43回の殺意―川崎中1男子生徒殺害事件の深層」と何冊もの本を出版されている方です。私は、石井さんの存在を初めて知りました。
 石井さんは、事件の少年たちが、保護観察等の司法や児童福祉、NPOなど、何らかの支援につながっていたにも関わらず、抜け落ちて事件になってしまった。それは少年たちと支援者のチャンネルが違っていたからだと言います。例えば少年たちの周囲にいた子たちは、週4、5日も会っていたのにお互いを友だちとは思っていない。○○の友だちだから会っていた、呼び出されたからしょうがない、暇つぶしの相手、一人でゲームするのは寂しいからetc.会話も、人形がしゃべっているという形で間接的にしていたというのです。直接関係を持つことが難しい。大人の感覚でフツーに手を伸ばすと、その子たちは「頭グリグリになる」と言うのだそうです。「頭グリグリ」=良い話はこわくなる、肯定されるとパニクる。
取材をしたお父さん側を好意的に見ていて、その分、お母さんを否定的に言うところがあり、少しバリアを感じて残念でした。でも、子どもたちに対しては本当に温かい目を持っている方でした。大人の価値観に合わさせようとしているからこぼれるのだ、子どもたちのチャンネルに合わせることが必要だという視点は、私たちが子どもたちと格闘してつかんできた思いにもつながり、一人でも多くの方に受け取ってもらいたいなと思いました。


全国ネット公開学習会in青森 
浜 笑美子(道草通信№91)


 9月15日土曜日、アピオあおもりに於いて『非行』と向き合う全国ネット公開学習会が開催され、参加してきました。
 青森には、14年前、我が子の事で苦しかった時に「いつか雨はあがるから」の本に出会い、毎月1回のあめあがりの会の例会にはるばる青森から東京へ通い、なんとか我が子と向き合ってこられたというSさんがいます。青森にも一人で悩んでいる人達が話せる場をつくっていきたい、と話していました。
「非行」と向き合う親たちの会代表の春野さんが「みんな悩んで親になる―『非行』の子どもたち・親たちから教えられたこと―」と題して、講演をしました。自身の2人の娘さんたちとの葛藤を詳しく話してくださいました。長女がどんどん変わってしまい、対応に追われているうちに、今度は次女が不登校になってしまったつらい体験です。長女のことを「ゴム毬のような子、どこに飛んでいくか分からない。」と言っていてなるほどと思いました。次女から「お母さんはお姉ちゃんのものだから。」と言われた話を聞いて私まで、苦しくなってしまいました。親ならなんとかしろ、と学校や周りから言われてもどうにもできない。そんな中、最後の砦が同じ悩みを抱える「非行」と向き合う親たちの会の立ち上げでした。
その娘さんは体験集「NAMIDA(涙)」に体験記を書いているそうです。
立ち直りに大切なものは「罰」ではなく「いい出会い」「いい環境」「いい教育」であり、どんな子にも「もう、おしまい」はなくて、何度でもやりなおしていけると話されていました。それは、非行克服支援センターが元非行少年からのインタビューをまとめた「何が非行に追い立て、何が立ち直る力となるか」で、さらに確信したそうです。
受け入れてくれる社会があれば、失敗してもやりなおしはできるというお話に、あきらめないで前を向いて頑張っていこうと思いました。



神奈川県弁護士会で 今年も講師をしました!
上田 祐子(道草通信№91)


神奈川県弁護士会が開催している“司法修習生向選択プログラム”に2人で参加し、今年も親の体験報告と「何が非行に追い立て、何が立ち直る力となるか」の調査研究報告をしました。司法修習生は、未来の弁護士や裁判官、検事等の卵。そのうち少年事件に関心のあるみなさんが選択するプログラムに、毎年呼んで下さっているものです。お伝えした思いを、これからの仕事の中で少しでも生かしていただけたらいいなと思います。



『第16回「非行」「子どもの問題」を考える親たちのつどい』に参加して
桃野清美(道草通信№90)


 7月28日桜木町ぴおシティで、第16回「非行」「子どもの問題」を考える親たちのつどいが行われ参加いたしました。第1部では立正大学・村尾泰弘教授の講演「社会の変化と子ども・家族」、第2部では藤本裕さんの体験発表が行われました。
 村尾先生は、数多くの少年非行や家族問題に関わった元家庭裁判所調査官であり、現在は立正大学社会福祉学部教授、日本司法福祉学会会長、NPO法人「神奈川被害者支援センター」副理事長を務めている臨床心理士です。講演で村尾先生は、少年非行は時代を映す鏡であり、現代の傾向から見る少年非行は若者の“コミュニケーション能力の不足”が問題であると述べられました。かつての集団化非行・暴走族などは消滅し、現代は個の非行・ネット型非行など集団化できない子どもによる非行が特徴だそうです。中でも印象的だったのは、「家族が崩壊するのを防ぐために子どもが非行をやっているように見える」という言葉です。私は偶然にもこの言葉が自身の通う福祉大学の「ライフスタイルと福祉心理学」の授業と重なりました。その内容は次の通りです。
かつての日本は「家父長制度」で家族そのものが一貫した方向性を向いていた。ところが、戦後日本は家族システムが変容、欧米の家族システムが魅力的に映り、一人ひとりが尊重されるシステムへと変わっていった。しかし、日本人にはこれまでの培ってきた日本の土台(心)がある。その土台にいわば欧米建築(自由)を建てたことで家は崩壊する。家族の機能は「情緒的安定を図る場」であるのに、上辺だけの家族では機能しなくなり、家族の違和感は子どもが一番敏感に感じ取るという。人間は満たされなかった時に一番ストレートに表現する方法は暴力で、当時、真面目な良い子が家庭内暴力を起こした。 
家族が崩壊すると安定・憩いの場を求め疑似家族をつくる。たとえば父親は仕事が終わってもまっすぐ帰ろうとせず同僚と飲みに行くとか、子どもは仲間と非行に走るとか、これらが疑似家族である。すると、非行の子どもを父親と母親が再び一緒になって、家族として必死に子どもを救おうとする。
まさしく村尾先生のお言葉通りで、家族が崩壊しそうになる時、人間の生得的な本能で非行という形に現れ、家族を繋ぎとめている子どもたち。心が締め付けられる思いです。
第2部の藤本裕さんは幼い頃からの親の抑圧が要因で、フラストレーションが非行という形で表れた体験談を話されました。とても誠実に一つひとつ言葉を大切にして、まっすぐな瞳でこれまでの人生と心の葛藤を私たちに語り掛けました。彼の話を聴いて思ったことは、大人は“子どもだから”とごまかしができた中で、抑圧しているという認識を持たずに、いつしか子が成長してもう通用しないという事になかなか気が付けずにいるのかもしれません。しかし、どの親もみんな完璧ではありません。だからこそ、彼のような心の声を直接聴く事は大人として成長するために必要であるのだと改めて思いました。 
藤木さんは今、「JUNK CRANK」で音楽活動をしており、最後に自ら作詞作曲した歌を披露してくれました。その歌に多くの人が心を揺さぶられ、涙をこえきれずに盛大な拍手でエールを送っていました。
とても有意義な時間を過ごさせていただき感謝いたします。


『第16回「非行」「子どもの問題」を考える親たちのつどい』に参加して
渡辺恵理子(道草通信№90)


 「手伝ってくれる?」。数十年来の親友からかけられたこの言葉が、つどいに参加したきっかけでした。友人は道草の会の役員。私と彼女は同じ頃に子育てをし、年に1度会うか会わないかの時間に、その悩みを打ち明けながら過ごしてきました。
話しは変わって今私は、次々と大きく変化する周囲の環境と職場の問題を抱えきれず、鬱病を患ってしまい仕事を辞めて療養中。毎日外出することを主治医から言われている私は、友人の声掛けを待っていたかのように「了解!」と返事をしたのでした。
 それでも参加するからには、ただボーっと座っているのではなく、何かを得られればという気持ちを持ちながら、台風が心配される中、心は青空の如く会場に向かいました。
 つどいは期待以上のものでした。講演で話された家族や親子の関わりやコミュニケーションの問題がとても興味深く、講師をされた村尾泰弘さんの著書「家裁調査官は見た」を講演後購入しました。
 自身の体験と歌を披露された藤本さんのお話しは、自分の子育てが回想されるようでした。藤本さんも辛かったように、お母さまも辛かったのではないかと、ついつい親目線になってしまうのです。講演で「困った子どもではなく、困っている子」と言われましたが、親は何をしてあげられるのか、何をすれば良いのかと問わずにいられません。子どもの気持ちを理解することは大事ですが、それととともに子どもにも親の気持ちを理解してもらいたい。そのためにコミュニケーションが重要なのだとわかっていても、それが上手くいかないのが親子。だからこそ難しいのではないかと…。
私は、子育てが終わったに等しいので、これからは子どもたちが子育てをする過程で様々な問題が生じた時、親子のコミュニケーションを手助けできるお婆ちゃんになれればいいなぁと感じました。
悩みを持つ親たちが一人で抱え込まず、相談したり共有したりできる会の存在は意義あるものですね。こうした会とあわせて、困っている子どもたちが駆け込める場所がたくさんできる事を願ったつどいでした。



「第53回神奈川夏の教育研究大会」に参加して    
松浦幸恵(道草通信№90)


今年も「第53回神奈川夏の教育研究大会」(於:湘南学園小学校)が開かれました。午前中の記念講演は、鈴木大裕NPO法人SOMA副代表理事「子どもの教育を通して社会の在り方そのものを問う」。鈴木さんは、16歳でアメリカへ単身留学、日本との教育の違いに驚き、教育学修士号取得。帰国後、日本の教員免許取得。公立中学校の教師を6年間経験し、その後再渡米して教育学大学院博士課程を取得。現在は高知県土佐町で、教育を通した町おこし、執筆、講演活動を行っているという、エネルギッシュで異色の経歴です。見た目や話し方、話の進め方など、大変穏やかな中に静かな情熱を感じる講師でした。
まっすぐに「教育とは?」という問いかけをし続ける鈴木講師の姿勢は、ある意味新鮮で、その時代で支配的な社会の価値観や理論が教育に与える影響を、ゼロトレランス(問題行為を絶対許さない→排除→犯罪者化)、新自由主義(自己責任論→社会的弱者の切り捨て)などで具体的に指摘されました。普段何気なく使っている「人材」という言葉が、人を価値で測る表現というお話は印象的でした。
午後は道草の会で担当する分科会「子どもたちの荒れや生きづらさを考える」で、昨年発足した「戸塚無料塾」の報告と参加者交流を行いました。戸塚無料塾は、退職された教員の方たちが、すでに保土ヶ谷で活動されてきた保土ヶ谷無料塾の応援を受けながら、小中学校の子どもを対象に毎週1回開催してみると、徐々に子どもたちが集まり、大学生、高校生、地域の協力者なども増え、お借りした会場が数か月足らずで手狭になってしまう程の盛況ぶり。幸いなことに、社会福祉協議会の会場を貸して頂くことが決まり、補助金申請の可能性も出て来ているそうです。進学塾のアルバイトもしている大学生が、一人一人の子どものペースに合わせ、人間的な信頼で繋がりを大切にする無料塾の活動に魅力を感じているとのこと。経済的、人的課題はまだまだあるそうですが、子どもたちにとって貴重な空間が拡がっていくことを願いたいと思いました。



講演―すべての少女に衣食住と関係性を。困っている少女から搾取しない社会へ―仁藤夢乃さん
NPO法人子どもセンターてんぽ 飛び立つために羽を休めてⅫ「彷徨う子どもたちとともに」
松浦幸恵(道草通信№89)


5月12日湘南台文化センターで行われた、てんぽの講演会。はじめにテレビ放映された、夢乃さんが深夜の街で少女たちに声を掛け、困っていることはないかをさりげなく聞いてまわる様子の一部が映像でながれた。「ただ話を聞いて、たまに食事を一緒にして、何かあったら相談するように伝える。」ふだん家にも学校にも居場所のない少女たちに声を掛けるのは、援助交際目的の男か怪しい店のスカウト。それでもご飯を食べさせてくれる、一晩寝る所がある、他の選択肢がない彼女たちは危険を感じながらもついて行き、だんだん麻痺していく。ついて行く少女たちに対して「遊ぶお金が欲しいから」「断ろうと思えば断れる」などの声も聴くが、少女たちのちょっとした心の隙間を狙って、ネットやスカウトが商売道具を買うようにあの手この手で近づいてくる。
夢乃さんは「彼女たちに必要なのは、指導や管理、矯正ではなく」まず「安心して過ごすことのできる場所や信頼できる大人との関係性」という。もちろん「医療や教育、専門的なケア」が必要だが、警察、病院、児童相談所などの公的支援は、売春や家出で何とか生き延びてきた少女たちの問題行動に目が奪われ、取り締まり対象となったり、受け入れ拒否されたりなど、本当に必要なことから対応がずれ、むしろ追い込むことさえある。
余りにも苦しい重い問題で、私の筆力ではとても報告出来そうもないが、表題の言葉の中にある「・・・少女から搾取しない社会へ」本来、未来の社会を築いてくれる私たち共通の宝のはずの子どもたち<私たちの希望>が「搾取」され、食い物とされている。子どもの問題を考えるとき、いつも、これは社会の一面ではなく、社会の本質を表している問題だと思える。



「不登校・ひきこもりの理解と対応(斎藤環講演)」
上田祐子(道草通信№89)


 以前から著書を通して学ぶことの多かった精神科医の斎藤環先生の講演があると知り、5月26日、つくば子どもと教育センター主催の講演会「不登校・ひきこもりの理解と対応」に参加してきました。
 まず、「『学校に行かない自由』『ひきこもる自由』を心から認められないと、不登校やひきこもりの支援はできない」ときっぱりとおっしゃったことが心に響きました。また斎藤先生は、「対話的態度」の大切さをていねいに話して下さいました。思春期問題の多くは「対話」の不足や欠如からこじれていくこと。議論や説得、正論、叱咤激励は「対話」ではなく、むしろ本人から自発性や意欲などの力を奪う言葉であること。「対話」の目的は何かの結論を出すことではなくて「対話を続けること」、つまり関係を続けることに意味があるのだということ等々。
特に、「相手の主観的世界を尊重することが大事で、客観は価値がない。主観と主観のやりとりで変化が起きていく」という話には考えさせられました。客観というのはつまり常識や一般論のことなのでしょう。主観というのはその人の感じ方や考え方。一方が常識や一般論をさも正しいことのようにふりかざしているような関係ではなく、お互いが対等に、感じ方や考え方をやりとりする関係こそが大事だというお話に、我が子との関係を思い出していました。問題行動を繰り返す息子を追いかけまわし、疲れ切って、ごはんを作る気力も失いリビングで倒れこんでいた私に、テレビを見ていた息子が、「この曲、いい曲でしょ」と話しかけてきた日のことを。ああ、顔を見るたび小言ばかりで、こういうフツーの会話をしてなかったと、本当にハッとしたのでした。
直接「非行」問題について話される場ではありませんでしたが、大切なことは共通していて、たくさんのものを受け取ることのできた講演会でした。



全国ネット総会報告(2018年3月23日) 田口清(道草通信№88)


  全国集会の前日に第13回「非行」と向き合う全国ネットの総会がありました。総会から1年の後の(?)状況について報告がありました。1団体脱退、1団体加盟で37団体、新しい団体の立ち上げの動きはあるが設立まではいかなかったという報告がありました。今回の取り組みとして、昨年3月18・9日に190人が参加した第17回全国交流集会、9月30日に78人が参加した横浜での公開学習会、8月の教育研究全国交流集会への参加、「全国ネット通信」の定期発行、財政状況は難しいが会費納入が良く乗り切ることが出来たと報告承認、2018年度の活動計画案については、加盟の呼びかけ、「親たちの会」がないところに会を立ち上げる、9月に青森で公開学習会を開催予定、諸団体との意見交換・交流を進めるなどの活動計画が提案され、そして役員には、浅川道雄さんを代表に、7人の副代表、事務局長などの役員を選出し承認されました。


=行って来ました第18回全国交流集会報告=
①全国交流集会に参加しました  会員 M(道草通信№88)


毎年桜の咲く頃に、千葉県柏市で開催する全国集会に参加しました。
私が初めて参加したのは、今は25歳になる息子が高校生の時、次々と起こすトラブルにどうしたら良いのか苦しんでいたときでした。
その年ごとに悩む問題も変わり、会場に行くとその時々の記憶が蘇ってきます。
今年の全体集会は、NHKハートネットTVでディレクターをしている渡辺由裕さんが“死にたい”と安心して言える場を作る「生きるためのテレビ」の試みという題で取材やSNSから伝わる当事者の気持ちに、番組としてどう向き合うか、放送された映像を見ながら、話してくださいました。
ハートネットTVは、「生きづらさ」を抱える発達障害、虐待、依存、自殺、貧困など、さまざまなテーマを“当事者”の視点から取材して放送している番組です。
「学校に行きたくない」「生きるのがつらい」といった気持ちを吐きだして、夏休み最後の夜の、不安で憂鬱な気持ちを分かち合おうと放送した「#8月31日の夜に。」は、10代の方から寄せられた声、メッセージを伝えています。
話を聞いているうちに、私も息子の非行で地域の中で存在するのが苦しくなって、“その場から逃げ出したい”“死んでしまいたい”と思っていた頃があり、10代に限らず、生きているのがつらいと思う時に、肯定も否定もなく、ただ聞いて貰える場所や、SNSなどのメッセージを読んで、気持ちが楽になる“居場所”があることは、大切なことだと感じています。
少しずつ違う方向からも息子のことを見られるようになったのは、私にとっての居場所に出会えたから。長い時間が掛かりましたが、息子とは互いの気持ちを思いやれるようになってきているように感じています。


②第3分科会「依存について考える」に参加して  M.S.(道草通信№88)


 ゲストの進藤さんの体験談、淡々と語られるも胸に迫るお話でした。司会の石原さんや、3名のダルクの皆さんのお話にも胸を打たれました。
皆さんの語られた言葉は、自分の2人の息子たちが、親の私には面と向かって言えずに飲み込んで我慢してきた言葉だと思いました。息子たちに代わって、私に告げて下さっているように思いました。また、私が4人の両親に言えずにきてしまったことも、代わって話して下さっているような気がしました。
不勉強の私には「アンカー」「プライマリーファミリー」「ホワイトブック」等意味も?の言葉がありましたが、そこは憶測でつないで耳を傾けました。
ゲストの進藤さんは度々に「僕には何でも、いつも『人に勝たなくちゃ』と自分を苦しめて生きる癖がある。優秀にこだわり、人と自分を比較して、人より上へとウソをついてでもやっていこうとする自分がある」という意味のことを語られました。
私は『それは私も、私の両親たちと一緒だ。不幸なこの国の人々の癖かもしれない』と思いました。私には重度の認知症で、施設でお世話になって4年目になる88歳の義母がいます。少しでも穏やかなで気持ちで健康で長生きして欲しいと願っていますが、悲惨だった義母と私、二人の息子たちの関係はこの認知症が救っていってくれたようなものでした。施設に入って2年目位の時、母がポツリとひとり言のように「ここはのんびりしていていい。いいところに入れてくれたよ。ここではもう誰が一番なんて気にすることもない……」とつぶやくのを耳にして胸を突かれました。義母は名誉欲の強烈な人でした。自分を満足させてくれない嫁や孫たちの不出来に憤り、息子たちがこの家を早くに離れて行ってしまうまで、何かにつけて不満をぶちまけ私たちをいじめ通しました。心はいつも『勝たなくちゃ』の戦争に明け暮れた人生を送ってきたのでしょうか。
進藤さんは、ご自分のその癖は「裕福に育った石原さんなんかには無いところを見ると、自分が父母不在の貧困の家に育ってきたせいだろうか」ともおっしゃっていましたが、会場からは「違う!…違う!」とつぶやく声多数の中で、私も義母が経済的には恵まれた環境で育ってきた人であることを思い「自殺者数世界第2位、幸福実現度世界第何十何位だから、この国みんなの暮らし方のそれはツケではないだろうか」と思いました。
私も実の両親からは「勝たなくちゃいけない」の「〇番でなくちゃいけない」のと言われて育ちました。日本人の心の中にはそういう戦争が延々と続いているような気がしませんか。そんな私は、この両親を週に一度見舞う時も、共有できるいい話で帰れたらといつも緊張して出かけるのですが、向こうでも言葉にできず不満がたまっているのでしょう。くどくどとお説教に夢中になり胸をぐさりと刺されると、もう一分でも早くこの嫌な部屋から出ていきたいという気持ちになって急いで帰るのです。
いいお話を聞かせて下さったダルクの皆さんに感謝でした。皆さんにこれからも沢山のいいことがありますように!と参加者の皆さんと拍手を送りました。
進藤さんは「大事なことは自分を作ること、自分にウソをつかなくなること」だと話して下さいました。
ダルクのケーキを3本買って帰りました。『最後まで残ってしまっていたら買って帰ろー!』と思っていたのです。健康安全指向の材料表示うれしく、一本は自分用、2本は精神病作業所でパンやケーキづくりに頑張っている従弟と叔母の所へ、こんなお話を聞いてきたよと資料も一緒に送ってあげました。おいしいケーキでしたよ!また来年も全国集会に楽しみに参加したいと思います。道草の役員の皆様にも沢山のご活躍、本当有難うございました!
追記:あめあがり合唱団に参加して
全国集会で、あの名曲2曲を歌う楽しみが増えました。この素敵な歌がどんどん広がるといいなと思ってきましたが、歌も歌う人あり、聞く耳を持つ聴衆あっての歌、ここでしか歌えない歌。聞いて帰るだけではもったいないと思うようになったのです。私はこの歌を「息子たちに届けたい=私のごめんね=」だと思って歌っています。≪多少、変でもバラバラでもいいのこの曲は!思いを込めて3倍声だして~!》と豪快なご指導も、温和に寄り添って弾いて下さる好青年の伴奏もとても気に入っています。みなさん、今度はご一緒にいかがですか


③第4分科会 「学校を問い直す」に参加して.(道草通信№88)


元高校教師平野和弘さんをゲストに、埼玉県飯能市立原市場小学校の教師、石井洋一さんが報告。子どもを中心とした教育活動になっていない、ゆっくり本音で話せる時間がない学校現場、自然豊かな環境にもかかわらず、それを反映していない子どもたちの生活などを率直に洗い出し、重荷をみんなで背負おう!、親も子どもも教師もみんな同じ現実の中で一生懸命生きているんだ!と「オレだけのせいじゃない!」を合言葉の教育実践をお話しいただきました。(全校204名10学級の小規模校)
そして「教育は愛だ!」をモットーに、自己肯定感を高めよう、全員が参加できる授業をめざそう、…そうはいっても、そんなにうまくはいかないぞ、という思いで、児童も教師も「個人」として尊重される生徒指導目指して、「挨拶はなぜするのか?」、忘れ物をしてしまう背景を意識する取り組み、乱暴な言葉の裏にある気持ちを引き出すよう「正しい」ではなく「やさしい言葉づかいをしよう」の呼びかけなど、他にも、生活目標の捉え方がとても丁寧に作られていました。また、福井県池田中学で起きた中2男子生徒の飛び降り自殺事件を受けて県議会が出した意見書も資料紹介されました。
 参加者からは、息子さんが中学で「なんでお前、ここに来たんだ!?」と先生に言われた、モーレツに働いてきた世代の子どもが親となりクラブ活動に見える、小中学校の文化の違い、ゼロトレランス(不寛容を是とする教育方針)、わが子が通いたくなるような居場所づくり、など、親・教師だけでなく家裁調査官など、さまざまな立場からお話がありました。
能重先生もお見えになり、体調不良で中途退席されながらも戻られ、学校は寺子屋時代から産業化社会の中、国家的使命のもと少数の教師で効率よく教育する場として作られた。そこで1人ひとりの子どもたちをみていくことと、人として育てていくことをどう折り合いをつけていくか、など貴重な経験もお話しいただきました。
 生きづらい社会の中で子どもたちを何とか守り育てたい、そんな切実な願いを感じる場となりました。



④テーマ別第7分科会「家族とは何か」を考える  浜笑美子(道草通信№88)


 ルポライターの杉山春さんがゲストの「『家族とは何か』を考える」分科会に参加しました。社宅で段ボール箱に閉じ込められて餓死した2000年の愛知県の3歳児餓死事件、2010年大阪市の風俗店の寮だったマンションの一室に50日間子どもたちを放置した二児置き去り死事件、父子家庭で2007年死亡していた子どもをゴミだらけの家で放置し2014年発覚の厚木事件。この3つの事件を取材した中から、見えたもの、杉山さんが感じたことを話していただき、参加者で家族との関係、社会の問題や支援について考えました。
 まず、驚いたのは、どの親も最初は一生懸命子育てしようと頑張っていたことでした。仕事でも会社での評価も高かった。だけどつまずいたあと、どんどん悪い方へと事態が進んでしまいました。なぜ、困ったときにSOSがだせなかったのか残念でたまりません。また、この親たちが、そのまた親との関係について問題を抱えてきたこともわかりました。
 公的支援があってもそれを使おうとならないのはどうしてか。母親は子どもを育てて当たり前、家族で何とかしないとダメな親と思われてしまう、など社会の常識が当事者を追い詰めます。話を聞いていて、子どもの荒れで悩んでいた自分の当時の事と重なりました。幸い私は外に助けを求めて、親たちの会とつながり、親だけ、家族だけではどうにもならないと思えるようになりましたが、この社会の中では家族で問題を抱えて苦しんでいる方がたくさんいると思います。親が子どもの面倒を見て当たり前、ではなく、国、社会ができる支援をしていくことが当たり前、となっていくといいなあと思いました。多様化の時代と言われるけど、学校でも、会社でも、家庭でも、はみ出たり落ちこぼれると排除される社会を感じます。
 話し合う中で、自分の価値観と違う人と認め合うことは難しいと改めて感じました。また家族の問題を考えると夫婦の関係が出発点であるという話が印象的でした。閉ざされた家族や子どもとつながるには、見守り続けて、今は支援が入らなくてもノックを続けていこう。私の中で、他人とつながり、居場所をつくり見守る。生きていけるという価値観を伝えていくことなどを考えた分科会でした。


⑤第8分科会「少年法を読み解く」  上田祐子(道草通信№88)


第8分科会「少年法を読み解く」に参加しました。まず最初に、「少年の健全な育成を期し~」等の少年法の理念や具体的手続きなどの基本的なことを教えていただきました。そして実際に、付添人である弁護士さんや家庭裁判所の調査官の方が、どれほど心をくだいて子どもたちに寄り添って下さっているのか伺うことができ、とても心強く感じました。同時にそういう少年法の理念を無視している方もいるという現実が何とかならないかとの思いも強くしました。
とくに弁護士や調査官の方が被害者の方ともていねいに関わって、その思いを加害少年に伝えていくことで、少年の内省が深まると同時に、被害者の方もただ責めるだけのお気持ちではなくなっていくというお話には考えさせられました。少年法改正の理由として「被害者感情」ということが乱暴に利用されてきたのだなとも思いました。
参加者の方のお子さんが複数で捕まり、年齢によって処遇が異なったため、20歳を超えていた子が刑務所から出て自死されてしまった。その子も少年院に行けていたら…… とのお話はとてもつらいもので、少年法の年齢引き下げを許してはいけないと強く思いました。外国での成人年齢引き下げには、「税金をとる」ことと「徴兵制」が背景にあったとのお話もあり、なぜこんなに少年法の年齢を引き下げたがるんだろう? という私の疑問が溶けたように思います。学んでいくことの大切さを改めて感じた分科会でした。



連続講座「思春期の子どもと向き合う」
上田祐子(道草通信№86)


9月から始まった連続講座「思春期の子どもと向き合う」に参加しています。これは、NPO非行克服支援センターが新宿区から委託を受けて行なっているものです。
「思春期ってなんだろう」「いい親子関係をつくるために」「スマホ・ネットと子どもの世界」「『性』について考える」の4回が終わり、残るはあと2回。子育て真っ最中の若いお母さん(お父さんも)に混ざって受講し、後半の時間は話し合い、シェアしあっています。「非行」っ子をかかえて苦悩していたころを思い出しながら、そのころもんどりうちながら実感していたことを、とても系統だって学ぶことができ、「ああそういうことだったんだ」と振り返っています。
ホルモン等、思春期の生物学的変化の影響の大きさを改めて感じたり、「性」はまさしく命そのものであること、思春期は親子関係の再構築の時期なのだということや、子どもにとっても親にとっても居心地のいい関係をつくるという「スター・ペアレンティング」という方法を知っていたらもう少し大きく構えて子どもと関われただろうこと。聴くこと(これが難しい!)の大切さや、親自身が自分を許して肯定できていることの大切さ、スマホ・ネットをはじめ時代の影響にも目を向けていく必要があることなど、いくつもの気づきがありました。
「思春期」を乗り切るのはとても大変なことなのに、地域の色々な子育て・教育の講座の中に思春期講座がほとんどないことに疑問を感じてきました。受講してみて、やっぱり大事だと実感。神奈川でもこういう機会が増えるといいなと思っています。



今年も 司法修習生研修会 で体験報告を行いました
浜笑美子(道草通信№86)


 毎年、神奈川県弁護士会子どもの権利委員会から声をかけていただき、選択型修習の1コマを道草の会で担当しています。
 今年も10月6日に2人で行ってきました。私が息子との体験報告をして、そのあと上田副代表が、書籍「何が非行に追い立て 何が立ち直る力になるのか」の2年にわたる調査研究の報告をしました。この本は親へのアンケート215通と立ち直った当事者へのインタビューで調査した42人の報告です。当事者とはじっくり時間をかけてインタビューをしたそうです。上田さんはアンケート結果や本に載っている生の声を読み上げ、この調査から見えたものを報告しました。「非行」に至る原因は1つではないこと、思春期・青年期の課題を乗り越えるのは本当に大変なこと。試行錯誤の振れ幅の大きさや、さまざまな体験、出会いなどが重なるものであること、そしてその立ち直った少年たちに共通しているのは「人と人との出会い」が大きいと報告しました。
少年たちは失敗も含めた経験を積み重ね、実感しながら成長していき、自己肯定感を取り戻しているようです。立ち直りのためには子どもを長期的に見ようとする社会の寛容な姿勢が求められます。是非真摯に向き合う大人として少年たちと出会ってほしいと話していました。
当日参加した方たちから、「実際の体験談を聞くことができて良かった」「『道草の会』の存在を知ることができ、弁護士として少年事件を担当する際に少年の親御さんに会のことを紹介することができる」など感想が寄せられました。